
火災の概要
当消防組合管内の高速道路上において、普通ワゴン車で走行中、車体の下部から白煙がでているのを後続の車両が発見し、クラクションを鳴らし知らせました。
普通ワゴン車の運転手は、すぐに車を路側帯に停車させました。その瞬間、ボンネットのすき間か炎が出てきたものです。
出火原因の調査
後日、メーカーの協力を得て、整備工場内で調査しました。
車両をリフトで持ち上げ、車体の下部を調査すると、燃えている場所はエンジン本体の後方付近でシリンダブロックに直径10cm程度の穴が開いていました。
(エキゾースト配管のオイルの焼損跡) (シリンダーブロックから飛び出したコネク
ティングロッド)
また、この付近に取り付けられている排気管(エキゾーストマニホールド)にオイルが「べったり」と付着しておりました。
次にシリンダヘッド(エンジンの上部)を外して内側を見ると、普通であればエンジンオイルが表面に「さらっ」 と付着しているはずなのに、エンジンオイルのかたまりがありました。
更にエンジン本体の一番下、オイルパン内には、ピストンを動かすための部品(コネクティングロッド)がばらばらになり、普通のエンジンオイルより「どろっ」と汚れているエンジンオイルが少量残っておりました。

(壊れたコネクティングロッド) (ピストンとコネクティングロッド)
車の所有者によると、「オイル交換はあまりしていません。」とのことでした。
調査結果
これらの事から、オイルメンテナンス不足により、エンジン内部にオイルを循環させるための通り道(オイルホール)に詰まりを生じさせ、エンジン内部にオイルが行き渡らなくなりました。これによりクランクシャフトとピストンを動かすためのコネクティングロッドを接ぐ部品(ビックエンド)が焼付けを起こし、コネクティングロッドが破壊してシリンダブロックの内壁に穴を開けました。この穴からエンジンオイルが外部へ噴き出し、高温となっている排気管に付着して発火点まで過熱され発火して火災となったものです。
なぜ、車を停車した後に火が発生したかについては、走行中はエンジンルーム内に風が入ってくるのでエンジン本体の温度が下がっていますが、低速の時や停車した時はエンジンルーム内の温度が上昇するため、オイルが発火温度まで上昇し発火に至るのです。
車を所有されている方へ
・メーカーの示すオイル規格、走行距離内でオイル交換(オイルフィルターを
含む)を行ってください。
@ オイルフィルターには、パッキンが付いています。交換する際は、古い
ものを必ず取り外し、付け換えるオイルフィルターにパッキンがついてい
る事を確認してください。オイル漏れの原因になります。
A オイルキャップ、ドレンボルトの閉め忘れに注意してください。
B 日頃、エンジン周囲からのオイル漏れやオイル量の点検を実施してくだ
さい。
※写真:(財)東京防災指導協会 新火災調査教本《第4巻 車両火災編》
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