古い扇風機から出火した事例

 火災の概要
 当消防組合管内において昨年の8月木造住宅が全焼する火災が発生しました。出火したと考えられる居室の床面から何らかのモーターが発見され、居住者に確認すると「壁につけてあった扇風機のものだろう。」とのことでした。
(写真1、2参照)


(写真1)床面に埋まっている扇風機のガード及び   (写真2)床面から発掘された扇風機のガード及び
     モーター等の状況
                              モーター等の状況    
  ○:モーター



 居住者からの情報
 「この部屋は普段物置として使用していますが今日は、孫達が夏休みで泊まりに来ているので暑いとかわいそうだと思い壁についている扇風機を掃除してスイッチを入れました。ところが、一瞬「カチッ」と動いただけですぐに止まってしまいました。その後、何度かスイッチを入れてみましたがまったく動きませんでした。この扇風機は、ひもを下に引くことによって、弱⇒中⇒強⇒切と移行するタイプなのですが、何度も入り切りを繰り返したことで現在スイッチがどの位置にあるのかわからなくなってしまい結局、動かなかったので気にせずコンセントも抜かずに外出してしまいました。この扇風機は、20年くらい前のもので最後に使用したのは何年も前のことです。」とのことでした


 出火原因の調査
 居住者の承諾を得て、扇風機のガード、ファンモーター等を消防本部に持ち帰り、詳細に調査を行いました。(写真3、4参照)すると、ファンモーターの巻線が部分的に焼失し素線の先端に数個の電気痕(※参照)が認められ、(写真5、6参照)またモーターに接続されている電気コードも断線し、電気痕が認められました。(写真7参照)



(写真3) 居住者の承諾を得て持ち帰った扇風機の状況 (写真4) 焼損した扇風機のファンモーターの状況
   



(写真5) ファンモータの巻線部分の状況                 (写真6) 巻線部分の素線先端の状況
     



 (写真7) 電気コード断線箇所の電気痕の状況    
  

 調査結果
これらのことから、この扇風機は明らかに通電状態であり、経年や湿気及びホコリなどの影響により、内部部品が劣化し故障していたため過熱して出火したものと思われます。

 対処方法
 下記のような場合は、電源スイッチを切り、必ずコンセントから電源プラグを抜いて、お買い上げの販売店又は製造メーカーに相談してください。


 ・ スイッチを入れても、ファンが回らない。
 ・ 回転にムラがある。
 ・ 始動時や回転中に異音や振動がある。

  ・ モーターが異常に熱かったり、焦げくさいにおいがする。
 ・ 電源コードが折れ曲がっていたり電線被覆が破損している。
 ・ 電源コードに触れると、回転が止まったりする。

                                          


※電気痕とは
 電気配線類は、絶縁被覆といって電気を通しにくい塩化ビニールやゴムなどを巻いて中の導線同士が接触しショートするのを防止した構造になっています。
 ところが被覆が損傷したり、熱により焼失した場合、導線同士が接触してしまいショートが発生し、その部位に球形の痕ができます。これを、電気痕やショート痕といい、私たちは短絡痕と呼んでいます。この現象は、火災の原因ともなり通電していた立証ともなります。